2023年09月25日

私たちの住んでいる天の川銀河の中心には、ブラックホールがある事がわかっています。銀河鉄道の夜の作者の宮沢賢治は、今から１００年も前に、銀河の中心のある射手座の方向に、＜（三国志の悪役）呂布のような黒い思想があって南斗の星々を隠すのだーー＞と書いています。（春と修羅　「あたたかく含んだ南の風が」）おそらく、憲治は、当時の先端知識と天才的直感力を総合して、この詩を書いたのでしょう。憲治が銀河の中心にあるいて座A*という電波星を知っていたとは思えないのですがーー。（この星が発見されたのは、憲治がなくなった頃です。）太陽の400万倍の質量を持つとされるいて座A*も、26,000光年離れた地球から見るとごく小さな点にしか見えません。

宇宙物理学者のS.ホーキング博士が、ブラックホールが実在するかどうか、同僚と賭けをしたそうです。アインシュタインの一般相対性理論から導かれたブラックホールが本当に宇宙に存在するのか？。ホーキング博士はブラックホールの実在証明はできないという方に賭けました。ブラックホールの存在を固く信じていた博士ですが、もしそんな証明が出来るなら、賭けに負けても喜んで掛け金を払うという訳です。もちろん光も逃げ出せない暗黒のブラックホールの写真を撮る事はできません。巨大な電波望遠鏡で見れば、リング状の電波放射の中心にブラックホールシャドウをもつドーナツのような画像が得られるはず。しかしブラックホールは、天文学的には非常に小さいため、地球から月の表面に置いたテニスボールを見分けるほどの解像度（ランドルト環を用いる視力計なら３００万！、どんな視力やねん。）が必要でした。昨年５月、天文学者達は、地上のすべての電波望遠鏡を結んで、地球規模の望遠鏡を作りあげ、銀河中心のブラックホールを撮影するというミッションを成し遂げたのです。

憲治の故郷、花巻に近い水沢市には、国立の電波望遠鏡があります。今回のブラックホール観測のミッションではこの望遠鏡が、日本のハブとなって活躍したという事です。星の観察が大好きな憲治さんだったら、きっと何を置いても水沢の天文台に駆けつけただろうーーそしてどんな物語を紡いでくれただろうかと想像します。

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