2025年07月08日

週末に家内を誘って、話題の邦画「国宝」を見に行きました。カンヌ国際映画祭でも賞賛されたこの邦画は、日本の芸能文化を世界に紹介する作品として、間違えなく長く語り継がれていくことでしょう。伝統的な歌舞伎の世界に渦巻くどろどろとした欲望、昭和〜令和に至る社会の変遷。そんな背景の中で、将来を嘱望された二人の若き役者が、抜きつ抜かれつして成長していく物語です。素晴らしい脚本のもとで展開するエンターテイメント性もさることながら、男が女を演じる女形という逆説的な女性美を極めた舞台映像は芸術の域に達しています。

私が感心したのは、人間国宝を演じる田中泯さんの演技です。全ての歌舞伎役者の頂点に立つその舞姿は、まさに神がかっています。前衛ダンサーであった田中さんの面目躍如といったところでしょうか。映画の観客は、人間国宝の舞台の目撃者として、歌舞伎の観客と同じ目線を共有する。見終わってから、しばらくは、言葉を失ってしまいました。歌舞伎には興味のない若いみなさんにも、ぜひ映画館に足を運んで味わっていただきたい大作です。

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