院長コラム

対話の劇場〜いのちのあかし

2025年09月22日

舞洲万博の会場の一角に、古い中学を移転した懐かしい木造建築があります。女流映画監督の河瀨直美さんがプロデュースした劇場型のパビリオン「Dialg Theater いのちのあかし」です。パンフレットには「対話」を通じて、世界の至るところにある「分断」を明らかにし、解決を試みる実験場であるーーとあります。このパビリオンは、観客の中から選抜された代表者が、あらかじめ決められたテーマに沿ってスクリーン上のコーディネーターと15分ほどリモートで対話するという趣向です。私が入場した時のテーマは、「本物と偽物は、何がどう違うのでしょうか?」ということでした。初対面の二人の女性の会話は、とてもスムーズで、まるでお茶でも飲みながら、世間話をしているようでした。私は、どことなく河瀬監督に似た女性コーディネーターが監督のアバターで、会話はチャットGPTによって制御されていると、勘違いしていました。(実際は、代表者の女性も、画面の向こうにいるコーディネーターも生身の人間だったわけですが。)真贋を見分ける対話が行われているシアターの中で、そのスクリーンの映像自体が偽物なのか本物なのかの区別がつかなくなっているとは、なんとも皮肉な事です。

プレスリリースする河瀬監督

劇場の外に出ると、陽はやや翳り、周囲の木立に優しい風が吹いています。混雑した万博会場の中で、そこだけはゆっくりした時間が流れているようです。私の頭は、まだ監督のアバターに囚われて混乱しています。一緒に鑑賞した家内がぽつりと言いました。「あんな遠隔診療ができたら、人間のカウンセラーは必要なくなるわね。」私は、はっとさせられました。私の目指す対話の医療(NBM)も、やがてはAIにとってかわらるのではないかーー。シンギュラリティ(技術的特異点)の地平の先には、生身の医者の要らない無機質な世界が広がっているのでは?。

元厚労省官僚 加藤浩晃先生のHPより

そんな未来を想像していると、ふと大好きな中島みゆきさんの歌の歌詞を思い出しました。🎵柔らかな肌しかないわけは、人が人の痛みを聴くためだ。(「銀の竜の背にのって」 D rコトーの診療所 主題歌 2003)何百万年の進化の末に辿りついた人の脳は、2進法のCPUが作り出すバーチャルな知性モデルとはどこか違うはずです。いくらロボットのヒーラー(治療者)が共感してくれても、生身の人間はあまり嬉しくないのではないでしょうか。血の通った人間同士の触れ合いや心の交流だけが、真の癒しをもたらすーー、きっと みゆきさんは、そんなことを教えてくれているのだろうと思います。確か、みゆきさんのお父上は、私と同じ産婦人科医であったはずーー。そんな考えにいたらせてくれたパビリオンと河瀬監督にも感謝しつつ、2度目の万博会場を後にしました。

フジテレビ系ドラマ『Dr.コトー診療所』より

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