院長コラム

多田富雄先生の思い出 (前半)

2025年12月09日

 大阪大学産婦人科教室で生殖免疫の研究に従事していた昭和の終わり頃, 最初に読んだ学術論文は「胸腺摘出による自己免疫卵巣炎」というものでした。生後すぐのネズミの胸腺を摘出すると免疫細胞が卵巣を攻撃して不妊となり、さらに、そこにある種の成熟T細胞を移植するとこの病態が予防できるという画期的な内容です。(下図参照)卵巣や卵管は、脳や精巣と並んで、血液との間にバリアがあるとされた臓器であり、そんなところにまで自己免疫疾患の影響が及ぶことに驚いた記憶があります。当時、この方面の研究をリードしたのは東大の多田富雄先生で、免疫細胞の暴走から自己を守る細胞を抑制型T細胞と名付け、自己免疫疾患や癌などの病態解明に新たな扉を開かれました。しかし 世界中の学者が血眼になって探しても、当時の方法論では抑制型T細胞の正体はわかりませんでした。その後、分子生物学の飛躍的発展により、抑制型T細胞は制御型T細胞と名前をかえ、阪大の坂口志文先生のノーベル医学生理学賞(2025年)に繋がったのは記憶に新しいところです。多田先生がご存命なら、きっとノーベル賞を共同受賞されていた事でしょう。
 「胎盤における母子間の免疫機構」の研究で博士号をいただいた私は、平成の初め頃、NY U(ニューヨーク大学)の免疫病理の教室に留学しました。留学先のラボの同じ階に皮膚免疫の泰斗Zoltan Ovary終身教授の研究室がありました。Ovary教授のもとには、世界中の学者や著名人が出入りしていましたが、毎年夏休みを利用して渡米される多田富雄先生もその一人でした。ある日、Ovary教授のラボのT先生が、私を呼びにきました。多田先生がこられているから、研究内容を英語で喋れという無茶振りです。両教授の前に引き出された私は、必死の英語で研究内容を話しましたが、もとよりまとまるはずもない。Ovary教授がトイレに立ったすきに、日本語で当時行っていた胸腺内のレトロウイルス(IAP)の発現に関する研究成果をお話ししました。今 思えば、門外漢に近い一介の産婦人科医が、細胞性免疫の世界的権威にお話できるような内容ではなかったでしょう。それでも多田先生は、「とても重要で面白い研究だから、頑張ってくださいね。」と温かい励ましの言葉をくださいました。その後も、研究室の内外で多田先生に何度かお声をかけていただいたり、著書にサインをいただいたりしました。優しい先生との一期一会が、今も私の記憶の中に深く刻み込まれています。
 
写真右端が、30代の著者。その後ろが、Zoltan Ovary教授。チェックの上着をきた紳士が多田富雄先生。

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