院長コラム

我がせこが来べき宵なり、ささがにの… 

2021年06月17日

非常事態宣言で2度も延期中断されていた嵐山の福田美術館の特別展が、再開されました。タイトルは「美人のすべて リターンズ」。今回の展覧会の肝は、114年ぶりに再発見された池田蕉園の屏風絵「もの詣で」です。蕉園は、明治末から大正にかけて活躍した閨秀(女流)画家。彼女の描くしなやかで気品にみちた美人画は、当時大変な人気を博し、京都の上村松園と並び称されました。

蕉園は31歳で急逝したため、現存する蕉園の作品は多くありません。以前に、蕉園の模写を待ち合いに飾っていましたが、さすがに本物の持つ筆力は違います。伝統的で一分の隙もない松園にくらべ、 柔らかく優しい蕉園の美人画は、現代的で好感が持てます。同時に、作品に描かれた物思いにふける夢見るような女性達は、どこかシュールレアリズムのような幻想性を感じさせるのです。この屏風絵を描いた時期の彼女は、婚約者の輝方が失踪し、精神的にはとても不安定な時期にありました。周囲の励ましもあり、製作に打ち込む事で傷心を紛らしていた若き蕉園。しかし、初恋の輝方への思いは断ちがたく、絵の中に蜘蛛の巣とささがにというかな文字を書き入れています。表題にある「我がせこが来べき宵なり、ささがにの…」は、日本書紀の允恭紀にある衣通郎姫(そとおりのいらつめ)の歌。

我が夫子(せこ)が 来べき夕(よい)なり ささがねの 蜘蛛の行ひ 是夕(こよい)著(しる)しも

今夜はきっとあの人が来てくれるにちがいない、笹の根もとで蜘蛛が巣を張っているからそれがわかるの──という句をふまえています。(中国には、蜘蛛が人の衣に着くと客が訪れるという俗信があります。)行方しれずのフィアンセを想う一途な乙女心が、深い女の情念に昇華して作品の中に息づいているのです。ささがねという枕詞は、昔は蜘蛛の妖怪の出現を暗示する常套句だったのです。これは前回紹介した平安のゴーストバスター源頼光の土蜘蛛退治にも登場するのですが、その事は次回に譲る事にしましょう。

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